「名前はなんていうんや?」
 
 
 亮は坊主頭と長髪の両方に聞いた。心の中でとはいえ、いつまでも髪型を、名前代わりとして使うのは嫌だったからだ。
 
 彼の問いには、まず坊主頭が答えた。
 
 
「ヨシダソウといいます。大和中出身で、捕手志望です!」
 
 
 ハキハキとした口調で坊主頭――ヨシダ――は答えた。志望ポジションなど、亮が聞いていないことまで言ったが、わざわざ言わせない意味も無いので、彼は指摘しなかった。
 
 
「ヨシダね。お前は?」
 
「カミヤマハルトです。投手志望です」
 
 
 亮が、長髪――カミヤマ――の声を聞いたのは初めてだったが、意外と丁寧に答えたので彼は少し驚いた。
 
 
「ヨシダとカミヤマやな。俺は河北亮。二年やけどファーストのレギュラー」
 
 
 彼は後半を強調して、簡単に自己紹介した。しかし、目の前にいる2人の一年生は何故か、少し怯えたような顔をしている。
 
 
「どうしてん。一年先輩やけどそんなビビらんでええで」
 
「いや、あの……そうではなく……」
 
 
 ヨシダがはっきりしない口調で言う。亮が不思議に思っていると、急に肩を叩かれた。