嵐の走る姿なんて、見飽きるくらい見つめてきた。

嵐を集中して見る程に、笑顔じゃなくなることも知っていた。


私は、ふと辺りを見渡した。

何とも言えない違和感が、空気を圧縮していて、どこか息苦しさを感じてならなかったのだ。


「どしたの?」

「……何か」

「ん?」


千里は落ち着かない私につられて、先に腰掛けた。

「美月…?」

「ごめんごめん!何か変な感じしちゃって」


笑いながら、千里の隣に腰を降ろしかけた、その時、真っ直ぐ見つめる視線を捉えた。

「あ…」

彼女だった。






嵐を見つめる私を見つめる彼女。


これ、普通じゃないって自分でも分かる。




敵意…?ではなさそうで、でも物憂げで、返す笑顔を失っていた。

「あ…彼女だ」


千里も気付いた。


「適当に笑っときな」

千里の言葉が終わる頃、無理して作った笑顔に彼女は零れるくらいの笑顔と、遠慮気味に手を振って見せた。


「ありゃ、完璧に気付いてる顔だね」

「裏切っ…てる…私…」

「はいはい!今更遅いし、諦められないし!美月は流すこと覚えなね」

「流すって…」

「流せないなら、諦めなきゃ。気持ち消さなきゃ」



確かに、千里の言う通りだった。