私たちのクラスは、何の競技も大して目立てず、先生の願う一位なんて無理だと、全員で諦めていた。
事前に配られたカラフルなポンポンも、振りかざされることなく無情に適当に放置されている。

「ね、水飲みに行かない?」

リレーまですぐだというのに、千里に誘われて席を立った。
時々湧き上がる歓声に、振り返っては足が止まる。

「あ、やっぱりいた」

千里の声に疑問を持たず、たった一人を探す。




いた。


嵐。


体育館の入り口で、友達と笑っている。



見つけるのは得意。

いや、特技か。


嵐の前を過ぎると水飲み場があり、そこで喉に潤いを与えると背後からデカい足音が近付いてきた。

『嵐だ』

足音でも分かるなんて、犬みたいだと笑えた。


「お前ら、気ぃ抜けてんなよ」

「もう終わったんだもん」

「しかも最下位」

悪戯な笑顔で、飲み終えたばかりの水飲み場に立つ嵐。
ポケットに手を入れたまま、斜めに角度をつけた顔は男なのに艶めいていた。

「ねえ嵐」

「ん…ちと待て」

「今日、彼女と過ごすの?」



嫌だ千里!!!!
私それ聞きたくない!!!!

「昨日会ったからな。今日は会わねーよ」

「じゃ、帰りに地元の駅で落ち合わない?」

「は?何で?」

「用事なきゃ会えないっての?」


千里は強い。心強い。

「んなこた言ってねーよ」

「じゃ、いいのね?」

「おう」


とりあえず取り付けた約束。
プレゼントを渡す舞台は決まった。