雨夜の月

教室に入ると、千里が嬉しそうな顔で近づいてきて、


「昨日、あれからどうだったの?」


と予想していた質問で、私を笑わせた。


「何で笑うの!?」

「別に。昨日は駅まで送ってもらっただけよ」

「どんな話をしたの?」


昨日の嵐との会話は、誰にも言わないつもりでいた。


「特に…普通の話だったよ」

「ホントに?」

「うん」

「なぁんだ…」


何を想像していたのか分からないけれど、期待してることは何もなかった。


「今度、ウチに泊まりに来なよ」

「うん!!行く行く!!」


千里の家でお泊まり。

嵐の街で朝を迎える。


ささやかな幸せ。
だけど、大きな満足感。


「いつがいい?」

「今決めるの?」

「決めてしまおうよ」


日程は今週末の金曜日に決定。

土曜日は千里のバイトまで、千里と遊ぶことになった。



帰宅して両親に話すと、


「信じてるからね」


と釘を刺されたが、千里の家に電話を掛けて


「お邪魔します」


と挨拶をしていた。