雨夜の月

ホームに降りたらすぐに電車が来て、ドア付近に立ち、さっきまで嵐といた場所に目をやった。


意味ある時間だったと、寂しくなる気持ちを私なりに整理し始めたら、

其処には嵐が立っていた。

さっきまでの場所に、嵐がいた。


離れすぎていて、私を見ているかは分からないけど、きっと、多分、嵐からも私が見えている。

そう感じて、私は軽く手を振ってみる。


するとフェンスの向こうから、嵐が手を振り返してきた。


ねぇ…嵐…


貴方はただの友達なの?


私は、貴方にとって、友達なの…?


静かに動き出した電車に、引き剥がされた想いは、加速し始め、全てが流れ出した。



嵐の街から離れていく程、胸に抱いた想いが溢れてくる。




いつまで我慢できるのか、私にも分からないことだった。


翌朝、校門の前あたりで嵐と会った。


「ちゃんと帰れたかぁ?」

「うん!!昨日はありがとう」

「じゃな…」


追い越していく嵐。


背中には、昨日のバイバイを映し颯爽と歩いていく。


手を伸ばせば届く距離なのにね…。


やっぱり遠いね…。