長居するつもりはなかったのに、異様な盛り上がり方で、食後もドリンクバーだけで何時間も話した。

気付けば21時を回り、いい加減帰ろうかと店を出た。


「俺が駅まで送るわ」

と、妙な笑顔を見せる千里と別れた。


自転車を押す嵐の隣で、今までとは違う感情を、抱き締めながら歩いた。


「さっきは、余計なこと言ってごめん」

「髪のこと?」

「俺が言うことじゃねーよな」

「私こそ…ごめん」


喧嘩じゃなかったのに、後味の悪さを二人共抱えていたと知った。


「彼女は…大丈夫?」

「何が?」

「こんな光景怒らないの?」

「あぁ…アイツは何も言わないよ」


静かに刻まれる時間。

嵐の声が、心に沁みる。


多くを望まないから、

もう少し

このまま

嵐の隣で。


「俺とアイツ、不釣り合いだろ?」


図星すぎて驚いた。


「え…と…」

「いーよ。充分分かってるから」

「ん―…」


『不釣り合いです』
本当は、こう思っていた。


「俺も不思議だけど、アイツの中身のキレイさに、急速に惹かれたよ」


嵐…

それは

防衛線ですか?


シャッと、何かの音が聞こえた…

気がした。