うしろの猫

やがて反対側のプラットホームに電車が来て、あの3人は、わたしと早智子ちゃんを睨みつけながら去って行った。


きっと、あの3人は明日にでも早智子ちゃんを溜まり場の学校の屋上に呼び出し、いじめるだろう・・・






・・・本当にバカな人たち・・・



わたしは、心の中でつぶやいた。




・・・あなたたちの、うしろにいる黒い猫は、たしかに1匹だけど・・・




・・・その猫は、とても大きな黒い猫なのよ・・・




・・・あなたたちが早智子ちゃんを、いじめ続けていたから黒い猫は、虎よりも大きくなってしまった・・・



・・・その牙は怒りの牙・・・



・・・その爪は憎しみの爪・・・




・・・その事も忠告してあげれば良かったのかしら・・・?




・・・きっと無駄ね。あなた達は、わたしの話などすぐに忘れて早智子ちゃんをいじめるでしょうから・・・



・・・本当にバカな人たち・・・



・・・あなたたちが今度、早智子ちゃんをいじめた時が最後・・・





・・・早智子ちゃんの赤い猫が現れて、あなたたちのうしろにいる虎より大きい黒い猫を凶暴にするわ・・・




・・・そして、怒りの牙と、憎しみの爪で、あなたたちを引き裂くの・・・




・・・早智子ちゃんの赤い猫が、あなたたちに怒りと憎しみを向けた時に・・・




・・・あなたたちの全てが終わる・・・・







人込みで混雑する駅のホームで別れを惜しむ二人。



早智子ちゃんの足元には誰にも見えない、わたしの赤い猫がいる。



・・・そして、わたしの赤い猫と仲良くじゃれあってるものがいる・・・・・




・・・それは、たったいま生まれたばかりの・・・




・・・早智子ちゃんの・・・






・・・赤い猫・・・




    
            [完]