・・・でも・・・それでもね。
あの携帯ストラップだけは、無くせないのよ。
大好きだった、お婆ちゃんの最後のプレゼントだったから。
わたし勇気を出して、来た道を戻って行ったわ。
いじめっこに出会ったら、すぐに逃げ出せるように慎重に歩いてね。
それからしばらくして、町外れの学校に向かう本道と裏道の分かれ道のところまで来た時に、突然後ろから呼び止められたの!
わたし、いじめっこだと思って飛び上がるほど驚き叫んだわ!
そしたら声をかけてきた方も驚いて叫んだのよ?
その叫び声が男じゃなかったから後ろを振り返って見てみたら、友達の早智子ちゃんだったの。
驚く早智子ちゃんに、今までの事を話したら心配してくれて、優しく慰めてもくれたのね。
そして、わたしが一番嬉しく思う事もしてくれたのよ。
早智子ちゃん、わたしが落としたお婆ちゃんの携帯ストラップを拾ってくれていたの。
早智子ちゃんが言うには、いま裏道を帰っていたら見覚えのあるストラップが道に落ちているのを見つけて、わたしのだと覚えていてくれたから拾ってくれたのだと。
わたし、早智子ちゃんに、いじめっこの事を聞いたんだけど、帰って来た道には誰もいなかったって言うのよ。
早智子ちゃんが裏道を帰ってきたのは、わたしがいじめっこから逃げた時からだいぶ後なのだから、きっといじめっこは、もう家に帰ったのだと安心したわ。
わたし、携帯ストラップを握り締めて思ったのね、いじめっこに拾われなくて本当に良かったと。
そして、また早智子ちゃんの手を握り締めて何度も、ありがとうて、言ったら
早智子ちゃんも一緒に喜んでくれて、二人で手を取り合っていたのね。
そうしたらね・・・そうしたら・・・
・・・聞こえたの・・・
・・・突然、聞こえてきたの・・・
裏道の奥の方から、誰かの叫び声が・・・!


