俺は雑踏の中で、彼女の背中を追いかけることさえもできなかった。

「……!」

「操」

「嘘つき!希は嘘つきだよ!」

「……」
見られてた……今の。

「私のことだけ好きでいてくれるって信じていたのに──」

「……ごめん」

「ひどいよ、希なんて大嫌いっ!!」

俺の勝手な我が儘で二人を傷つけたのは事実。
操もまた背を向けて去っていく。

弁解、言い訳……そんなものはない。この状況では全てが嘘になる。

だから蜜柑にも操にもしっかり伝えなきゃいけないんだ。

──俺の本当の気持ちを……。