勇貴に詰め寄る友希子の瞳が次第に潤んでくる。


「初めから私のことなんて好きじゃなかったのね。――あなたっていつもそうなのね。好きでもないのにどうして付き合うの?」


「好きだと言われるから」


「体目当てなわけ?単なる遊びなわけ?」


「そうじゃないけど…、それでもいいさ」


「……」


友希子の形相に勇貴は気まずくなって目をそらした。


「――ごめん。分かってくれよ」


ただひたすら謝る勇貴に向かって友希子は叫ぶように言った。


「もういいわよっ!ばかっ!!」


同時に、信じられないくらいキョーレツなビンタが勇貴の頬に飛んだ。


「女の敵!地獄に落ちろ!」


屋上のコンクリートの上に投げ出された勇貴を見下ろしてから、友希子は勝ち誇ったように胸をそらした。


そして友希子は涙を拭うと、逃げるようにして鉄の扉を開け、駆けて行く。


勇貴はあおむけに倒れたまま起き上がろうともせず、つぶやいた。


「き…効いた…」


今度の恋はなんだか波乱万丈な恋になりそうな気がした。