彼の頭の中に、ひやりとした言葉が浮かんだ。
--臓器売買。
顔に切り傷が走ったこわーい「や」が付く人たちが絡んできそうな世界の言葉だ。
貧乏人から無理やり内臓を取っていって、
それを必要としている金持ちにたかーい金で売りつける……。
……まさかこいつ、そういうものを斡旋している?
臓器を摘出とかやっぱりそういうものは、どうしたって医者の手がいる。
さぞかし、悪い医者も多い事だろう。
「……」
「どうした?」
「うわあああん! この極悪人! どうせそうやって俺から安く内臓を手に入れて、
もっと高い金で誰かに売る気なんだろ! 悪魔ァー!」
叫んだ後、しまったと思った。
しかし彼は、悪人顔を披露するどころか、何故かきょとんとしていた。
「売る? そんなもったいねえことしねえよ。勘違いすんな。
俺が臓器を欲しいのはな、そんな理由じゃねえ。
ましてや解剖でもない。
個人的に愛でるためだ!」