そして、帰り道で悪口を叩きながら、痛いのを我慢していた。

「……うう、無理だよあんな大金……畜生冷血なイシャめ!

人の足元じろじろ見やがってー……金の亡者めっ! 

あと、とんまでタヌキで鬼でうんこで、うぐっ、痛つう……!」


でも無理に走った所為で、余計痛くなった。

変な汗が止まらない。

「……でも、ああやって逃げちゃったものの、いつかは手術しなきゃだよな……

盲腸だって、破裂したら死ぬっていうもんな……

やだよー、怖いよー」


考え抜いた末、彼は高校時代の友人を頼ることにした。

ただし、それは医者の息子である。

しかも、大病院の坊ちゃんである。

正直、彼が別に好きでも嫌いでもなかった奴である。

でも、こんな時にぽんと大金を貸してくれそうな人間は、彼以外思いつかなかった。


「しょうがないか……」

命には代えられない。

彼は、携帯を開いた。