「…紺野、瑠璃……」

男はちょっと目を細めると、
「いい、名前だ」
と、言った。

忘れることができないくらいのテナーボイスで、言った。

「もったいないくらい、お前に似合ってる」

クイッと、顔をあげられた。

「……ッ」

あごを、舐められた。

周りは、未だにこの状況に気づいていない。

助けて……!

そう思った時、離れた。

近かった顔も、何もかも離れた。

「これくらい、でいいだろう」

ニヤッと、男が笑う。

男は席を立つと、
「最後に、俺の名前を言う」
と、言った。

「五十嵐、雄平だ」

そう言うと、グラスの隣にお金を置いた。

最後に、チラッと私を見ると、
「覚えておけ」

それだけ言うと、店を出た。