「花火終わっちゃったな〜。」



私は花火を見ていない。


ずっと地面を見ていた。



「そろそろ行くか。」



神楽は立ち上がった。



「えっ?!」


私は……無意識に神楽のTシャツの裾を掴んでいた。



『………あ、えっと…みんな帰って行ってるからもう少し経ってから行こう?混むしさ。』



なんで裾を掴んだのかわからない。


ただ…もう少し一緒にいたかった。



もう少し並んでいたかった。




「そうだな。」



神楽がまた椅子に座った。



…………。



二人は沈黙だった。



隣をそっと見ると神楽は空を見ていた。



『なんで空見ているの?』



「月見てみろ。」



私も月を見てみた。




『……満月。』



空にはオレンジ色の大きな満月があった。