ガジュマルの木の下で

「やだショーコ。なんて顔してるの?ほら。足だってあるし、生きてるよ?」

隣にいた喜志はくすくすと笑いながら言う


「…どうして?どうして飛んだの?」


すると喜志は上ってきた坂道の方を見た。

視線の先を追う祥子

海に背を向けて振り返ると
やはり祥子は言葉を失った。


街やビルの中に、ある区域だけ草原のように見える。
ぽっかりと穴があいたように。
「…あそこ何?」


「米軍基地。」

喜志は目を伏せて
静かに答えた。

この島の米軍基地の存在は知っていた。
知っていたし、横だって通ったけれど
…けれど
それでも
あんな物、ここに無ければいいのに。そう考えた時、

喜志ちゃんの顔立ちと、あの草原が重なっていった。

「パパがあそこにいるの」

喜志の深緑の目は
あの草原を見つめたまま


神様。