「じゃ行くよ〜。……」

『いつも世話になっておるな、相模さんよ。今日お呼びしたのは、薄々分かってはおるだろうが、犬の民の王女のことじゃ』

「王女?」

「流之助には、王だと聞いたんですが……」

『ああ、先代が二年前に亡うなったと言うから、今は王なのじゃろう。

ともかく、犬の民と猫の民の間に長年あった溝が、ことに深くなっていることを理解して頂きたい』