どんっ。

「うわっとと…悪い、大丈夫か」

そんなことを考えながら歩いていたら、すれ違いざまに旅人とぶつかってしまった。

「ええ、こちらこそ失礼」

ぶつけた所を押さえるようにして、旅人はそそくさと立ち去っていく。

「あっ、今の人待ちなさい!」

百花がぱっと振り向いた。
すかさず旅人が走って逃げ始める。

「ん、どうした?」

「どーしたじゃないでしょ! あの人に財布すられてる!」

百花は影縛りの術を唱えはじめる。

おお、逃げ足は相当なもんだな。
みるみる遠ざかってく。