ガー がやがや
車の音。人々の喧騒。
目の前を、足早に人々が通り抜けて行く。その奥には、螺旋を描きつつ天に伸びる、6本の巨大な柱が聳え立っていた。
私はぽかんとして、両手の上に顎を乗せつつ、目を開いて座っていた。口元から、ぽろりと何かが地面に落ちた。
たばこ
目で追った先には、ちびた、申し訳なさげに弱々しく火の点った煙草が転がっていた。
『懐かしいもん、見れた?』
すぐ傍の隣から、声がした。振り返ると、ちびた煙草を銜えた八重ちゃんが、にやにやといった感じで笑っていた。
「ふあ」
と、私は情けない声を漏らす。
八重ちゃんは満足したように、にひひ、と笑顔を見せた。
「なんで?」
私の、色々な思いを込めたその問いには答えずに、ふふ、と意地の悪い笑みを浮かべながら、八重ちゃんは立ち上がって背伸びをする。
『よーし、じゃあ、どっか飲みにでも行くかあ!』
「もう」
と、私は苦笑して立ち上がった。
「流石にこれは、変人……っていうか、それすらも超越しちゃってると思うよ」
八重ちゃんは、ん~? なんて返しながら、夜の街を歩き始めた。私もそれに続いて歩き始める。
十二年ぶりに再会した大親友の下げるバックには、くたびれた、年代物のクマのキーホルダーがぶら下がっていた。

