おみやげ

 咄嗟に、キッチンに置かれている時計へと振り返った。
 11時32分
 やばい
 私は玄関へ向けて猛ダッシュをかける。と、途中で思い出したように体を反転させ、階段を駆け上がった。自室のドアを勢いよく開けると、私は机の上に置かれたままになっていたクマのキーホルダーを手に取った。再び玄関へと走りながら、キーホルダーにぶら下がるクマのぬいぐるみを凝乎と見つめた。
 このこは、忌まわしき思い出の象徴などでは、決してないのだ。

 少なくとも、今は、まだ。