めずらしく、練習中にぼんやりしてしまった。

おかげでミニゲーム中3点も取られた。
いつもなら全神経を集中し、あの白と黒の玉を目で追っているのに、今日はさっぱりだった。
気がつけば相手オフェンスが目の前まであがってきていて、
思い切り放たれたシュートが俺の左脇を猛スピードで過ぎ去っていた。
一歩も動けぬまま、ボールはネットに収まっていた。

くそっ。

「トラー今日調子悪いじゃん!」

練習後、落ち込む俺の背中を同期の皆森が軽く叩いた。
こいつとは高校からの付き合いで、ずっと一緒にサッカーをしてきた。
気の置けない友達ってやつ。

「んー、ちょっとな」

俺が曖昧に笑うと、皆森はうんうん頷いた。

「分かった、後悔してるんだろ?ミユキちゃんと別れたこと」

「は?」

「そりゃ正直フるにはもったいねぇよなぁ。今からでも遅くない!」

「あのなぁ」

「大丈夫、まだミユキちゃんお前のこと好きらしいから!」

・・・皆森は良い奴なんだが、人の話を聞かないのが玉に傷だ。