ふと、目を覚ました。


まだ、日が昇るには早い時間。

ずっと前にもこんな事があった。

何の前触れもなく、突然目が覚めた事。

あの時は、そう、茜が会いに来たんだ。


俺はベッドから降り、窓の外を見る。

あの日と同じ明けの明星が輝いている。

やがて空はゆっくりと茜をつれてくるだろう。

そう、あの日と同じように…。



会いに来てくれたんだな、茜。

俺、今日結婚するんだ。

お前と過ごした数ヶ月は、俺にとって人生の宝物だ。

あの頃のような激情はないけれど、穏やかに俺を愛してくれる女性をみつけたよ。

お前のくれた瞳で真っ直ぐに未来を見据えて歩いていくよ。

お前が生きたかった分まで、大切に人生を歩んでいくよ。

新しい今日が始まる。

ゆっくりと空が茜の色に染まり始める。


愛していたよ…茜。


紅く染まる朝焼けが晃の顔を染めていく。


晃、幸せになって…。


茜の声が聞こえた気がした。



*** 旅立ちの朝 Fin ***