部屋で独りになった時、初めて頬を温かいものが伝った。

どうして…泣いて縋ってでもあなたを引き止めなかったんだろう。

どうして…あなたの前では最後まで泣けなかったんだろう。

心も体も、まだこんなにもあなたにを求めているのに。

本当はまだ愛していると、心がこんなにも叫んでいるのに。

夢であって欲しいと願う私を現実に引き戻すのはラジオから流れるBGM…


失っても尚、こんなにもあなたが愛しいと…

もう一度あの頃に戻ってやり直したいと…


細い悲鳴のような女の悲しい歌が耳について離れない。

独りの夜は蘇る思い出が鮮やか過ぎて、寂しさに押し潰されそうになる。

携帯の中の幸せな二人を、思い出を辿りながら一つずつ消していく。

二人で笑った日々の記録が全て消え、最後にあなたの番号を消してから、部屋の窓を開け放ち、少し淀んだ星空を見上げた。



さようなら…



生温かい風が頬を弄り、涙が風にさらわれていく。

悲鳴のような歌は私の涙を運び、夜の闇へと消えていった。




++BGM Fin++