俺は彼女の事を何も見ていなかった。

傷つけるだけ傷つけて、最後まで甘えたまま終わった余りにも幼い恋。

彼女はあの頃の俺をどう思っているだろう。

馬鹿な男だったと呆れているだろうか。

新しい恋をして、二度と思い出したくないと思っているだろうか。

それとも今夜のように月の蒼い夜は、少しでも懐かしいと思い出してくれることがあるだろうか。



失って初めてその存在の大きさを知り、あの日の事をどれだけ後悔しただろう。

いつかまた会えたら、きっと伝えよう。

護ってもらってばかりだったのに、気づきもしなかった事をごめん…と。

ひたむきに愛してくれてありがとう…と。


星の美しい夜は、胸の奥底で疼く甘い痛みを抱きしめる。


許されるものならば、もう一度あの日に戻って抱きしめたい。


忘れられない笑顔を。




++忘れられない笑顔 Fin++