「それよりしおり,怖くて眠れなかったのか?」
「別に怖くなんかないよ!!」
べーっ,としてやった。
「父さんは,ヘルニアの手術をしたとき,麻酔が切れた瞬間,まな板の上の鯛だったな!」
また始まった。父の良くわからない例え。
「何その,鯛って。」
白けた目で興味なさげに聞く。
「まな板の上で鯛が跳ねるみたいに,麻酔が切れた瞬間,痛くて痛くて,飛び上がったんだよ!!」
「えっ!?そんな痛いの!?」
前のめりになって聞く私。
「当たり前だろ~!!
体をで切って縫うんだから~!しかもしおりの場合,筋肉までとっちゃうんだからなあ!」
ワハハっと笑うだけ笑って,父は仕事に行った。
手からロールパンが滑り落ちた。
あまりの衝撃の余り,言葉が発せなかった。
嘘…痛いの!?痛いの!?
え~っ!嘘…知らないよそんなの…!
一気に不安一色の波にのまれた。
一徹よ…。嫌な事だけ言うだけ言って去るなんて…
私は父を恨んだ。
ってかそれより痛いとかどうしよ~!聞いてないよ~!!


