降りていいと指示された私は起き上がって,座っていた椅子に戻った。
荻田先生も椅子に座って
「ん~…きっと腫瘍はこの内側部にあるんだね…。そんなに大きくはないと思うんだけどね,このフィルムと触診からするとね。」
と私の足の内側部を実際に指して先ほどと一変した神妙な面もちでいった。
「…この腫瘍を治すにはどのような方法があるのですか…?」
心配そうに母が荻田先生に尋ねた。
「治す方法はないですね…薬を飲んで腫瘍をなくす,なんてことはできません。痛みをとるとすれば,自分にあった痛み止めを見つけて,痛いときにその都度処方するか,
または手術をして内側の筋肉ごと切除するか,ですね。」
と答えた。
「但し,手術するとなったら,傷も残るし,筋肉ごと切除する訳だから,筋力も劣りますし,リスクは伴いますがね。ただ,日常生活でも痛いのならば,するべきだけどねぇ。」
と付け加えた。
「手術……ですか?…」
予想外の言葉に私は言葉を失った。
自分には一番無縁だと思ってた言葉だったのに…
「うん,日常生活でも痛む?」
荻田先生が私の顔をのぞきこんで尋ねる。
「はい…。椅子に座るときは,左足に体重がかかると痛いので,浅く腰掛けるか,左足を高くして浮かして座っています。」
「そうか…。つらそうやなあ…でも,手術するかしないかは,自分がこれから痛みに耐えられるか,耐えられないかを考えてみて,自分で決めてね。
無責任なようだけど,手術しなきゃ死んじゃう,とか具合が悪いって訳じゃないから,医師はちゃんと手術のリスクの説明はした上で,あとはするかしないかは患者さんに決めてもらう様になってるんだ。」
とにこっと笑って言った。


