上体を上げて見た先に立っていたのは,
白衣姿の尾上先生だった。
「せんせ……」
「立ちっぱなしで大丈夫ですか?」
清廉な,爽やかスマイルが私を惑わす。
「はっ……はい…」
恥ずかしくて,思わず下を向く私。
「元気そうですね。良かった。」
そう言って,またはにかんだ。
心拍数上昇中。
思考回路停止。
「あんまり,無理すんなよ。」
そういうと,私の頭の上にポンと手を置いた。
ヤバい…きっと私…顔真っ赤だっ…!
そう思って一瞬ためらってから,先生の方を見た。
一瞬,気のせいか,冷静な先生の本当の顔が見えた気がした。
冷静沈着。
クールフェイス。
そんな先生の素顔というか…。
でも,先生はまたいつものように,鉄の仮面をかぶりなおしたかのように,クールフェイスになった。
「お大事に。」
言ったと同時に頭の上に置いてあった先生の手が,なくなった。


