涙が溢れそうになった。
でも,気付かれないように。
最後まで私の中の小さな片思いのままにするために。
「では,午後退院してもらいますね。…何か聞きたい事はありませんか…?」
すっと私を見つめる目。
何もかも見透かされそうな…。
聞きたい事?
山ほどあるよ。
まだまだあるよ…
先生,どこにすんでるの?
彼女はいるの?
連絡先とか?
馬鹿げた質問ならたっくさんあるよ?
話したい事…沢山あるもん。
でも…一番聞きたい事は…
また…会えるかな…?
ってこと。
でも,ぐっと飲み込んで,
「いえ,特に。」
そういって精一杯笑った。
「そうですか。」
先生も笑って,出て行った。


