「高校生ですか?」
不意に口を開いたのは,やつだった。
「はい…」
壁,感じられちゃったかな?
子どもだって思われちゃったかな…?
自分の気持ちに素直になった私は,ほんの些細な事も気にしてしまう。
乙女かっ!
ツッコミを入れたくなる位,気恥ずかしい。
「どこにあるんですか?」
「精華高校っていうんですけど……ん~…近くに競馬場があります!」
何にも目印が思いつかなかった私がとっさに口にした目印が…競馬場。
よりによって…トホホ。
「ふ~ん,そうなんですか。この辺よく分からないんでね。」
そう言って,軽く笑った。
優しい,笑顔。
初めて笑った所をみた。
また,ドキッとしてしまう。
「…せっ…先生は,地元はここじゃないんですか?」
先生という呼び方にまた,戸惑いを感じる。
「はい。小さい頃も,大学も,とっても遠い所。地元は,奈良かな。」
先生って,小さい時どんな子どもだったんだろう…?
モテてたのかな?
はたまた…ガリ勉?!
勝手に想像して,吹き出しそうになってしまった。
でも,医者って事はそりゃあ,頭良いよね…
年齢以外に,また1つ,壁が増えた。


