気がつくと,病室に戻って来ていた。
そういや,ベッドごとコロコロされてた気もする…
横で椅子に座っていた母が立ち上がる。
「しおり…大丈夫?」
「うんっ…っ…痛いっ…!!」
またあの激痛が私を襲う。
重く鈍い,痛み。
痛みを紛らわせる為に右足を思いっきり殴る。
出来るだけ左足に意識を集中させないようにした。
「お母さん,足の下にタオル…挟んで!!!」
足の高さや曲げる角度がほんの少し変わるだけで痛みも変わる。
何とか,最も痛くない体制を見つけようとするが,なかなか見つからない。
「痛い…!!」
声は出ないけど,必死に訴える。
駄目だ…
本当に痛い…!
完全に,手術をなめていた…!
殴ったり,つねったりしている右足が逆に真っ青になりそうだ。
ベッドのリモコンで頭の位置を上げた。
やっぱり痛い…。
初めて見た自分の左足。
包帯が太もも全体をぐるぐるに巻き付けていた。
「失礼しま~す。…どうですか?…」
看護士さんが見に来てくれた。
「大丈夫ですっ…」
全然大丈夫なんかじゃないのに強がる私。
「痛み,10段階で言うとどれ位ですか?」
「多分…3くらい…です…」
この時の私は馬鹿だった。
もう我慢出来ない位痛かったのに,これ以上痛い痛みがあったらどうしよう,と思ってそういってしまった。
「また我慢出来なかったら言って下さいね。」
そういって看護士さんは去っていった。
自分の言葉に…後悔。


