夏恋~君といたNatu~


洗顔と歯みがきも終わり、鞄を持って母さんのいるリビングに足を運んだ。
ドアの前までくると一つ深呼吸をして、ドアノブを回した。

キッチンではまだ片づけをしている母さんがあたしに気がつくと、ニコッと笑ってあいさつをしてくれた。
そんな母さんから視線をそらした。

「おはようサラ。」
「…おはよ。」

短かめにあいさつをすませるといつもあたしが座っている位置に腰かけた。
目の前には数々のおかずとご飯、それに牛乳とヨーグルトまでついている朝食が置かれていた。
さっさと食べようと、おはしを手に取るとあたしの反対側の席にもうー食分置かれていることに気がついた。

「母さんも一緒に食べてもいいかしら?」

やっとこさ片づけが終わった母さんがあたしの目の前の席に座わった。
ということは、あの朝食は母さんの分なのか。

「別に…。」

”ー緒に食べる”という聞きなれないフレーズに少し戸惑ってしまいつい素っ気なく返事をしてしまった。
だって母さんと朝ご飯なんてほんとうに久しぶり。
今だってちょっと緊張してる…。

「学校のほうはどう?うまくいってる?」
「まぁまぁ。」
「友達はできたの?」
「うん、できた。」
「そう、よかったわ。」

まさか母さんとこんな会話をするとは思ってもみなかった。
いつもはあんまりロなんか利かないのに。
ほんとうに”勉強”さえなかったら、ごく普通の親子になれたのに…。


「ところで、勉強のほうは大丈夫なの?」


きた…。
結局母さんはあたしのことなんかどうだっていいんだ。
あたしが勉強できるかのほうが心配なんだ…。
やっぱり普通の親子になれることはできないのかな……。
やば…。
泣きそうになってきた。

急に目頭が熱くなり、今にも涙がこぼれおちそうになった。

「…母さんにそんなこと言われなくたってわかってるよ!」
「サラ…。」

さっさとご飯を食べ終えると、鞄を持って玄関をとび出した。






こんなはずじゃあなかったのに。



もっと母さんと色んなこと話したかったのに。



いつのまにかあたしの目には涙がにじんでいた。