「だから私、一ノ瀬さんのこと信じられなくなんかなってません。 ただ…」 そこまで言うと彼女は黙り込んでしまった。 「ただ?」 目を伏せて口を軽くすぼめる。 彼女が困ったときのくせだ。 本音を言えば、俺はこの表情に弱かったりする。 心拍数があがったのが自分でもよくわかった。 「…もう一ノ瀬さんの人形でいたくない」 瞳を潤ませて真っ直ぐこちらを見つめる彼女。 …参ったな。