「私…もうモデルは嫌です」
シャッターを切る指が止まった。
「…そんなこと聞いたら、写真なんか撮れないなぁ」
手招きをして、不思議そうな顔をした彼女と二人で庭にある長椅子に座った。
しばらく沈黙が続いても、焦ってはいけない。
話を聞くときは相手と呼吸のタイミングを合わせる。
そうすると、不思議と沈黙も苦痛じゃなくなるから…
あとは彼女が言葉を選ぶのを待つだけ。
「…一ノ瀬さんが大学生のときにしたことは間違いじゃないですよ。
好きな人と一緒になりたくて少しズルいことをしたくなる気持ち、よく分かりますもん」
ほら、出てきた。


