「そんな個人的な事情で会わせるわけにはいかないなぁ…
彼女だって周りの人には自分が兼業でモデルやってるのは秘密にしてるわけだし」


口ではそう言ってみたものの、
一番の理由は、いくら後輩とは言ってもモデルをアイドルみたいに扱われるのが嫌だからだっていうのは、自分でもよく分かっていた。


「一ノ瀬さーん…あの小説がどんな話か知っててそんな風に言うんですか?」


ああもう…うっとうしいな。


「知ってるよ。
大学生時代の話だろ?
思い出に浸るのはいいけど、他人まで巻き込むのはやめてくれるかな」


あからさまに怒りがあらわれている自分の言動に、少しだけ焦りを覚える。


「僕が好きなの知りながら、隠れて彼女と付き合ってたのは誰でしたっけ…?」


その言葉を聞いた途端、6年前の思い出が一気にフラッシュバックした。


彼女のことは全部頭から消したはずだったのに…