私と静電気。[短編です]






そのとき、男の子はそっと笑の腕を放した。


「悪い、腕…掴んでたもんな。あ、俺さ、廉っていうんだ!"廉"でいいから。」



"廉"…?
どっかできいたことあるような名前だなあ……。



"廉"という言葉が耳に入ったときだった。
えみは頭の中で、記憶を一生懸命探っていた。


悩んでいるせいで、笑の眉間に皺がよる。
すごくいかつい。
そんな笑を見て、廉は慌ててこう付け加えた。



「俺もお前と同じく遅刻常習犯なんだよ。前から気になっててさー。俺に対応するくらい遅刻するなんて、どんな奴かと思ってたよ。まさかこんな可愛いとは…予想外だよ。サプライズだよ。まじびっくり!」



なんだか早送りしたような早口で、しかも一切休憩を取らない弾丸トーク。
笑は普段から自分がゆっくり喋るため、聞きなれない速さに話を聞き取れないでいる。日本語じゃないみたいだ。
ただ立ち尽くし、ボーっと、聞き取れた単語を繋げていたが、勢いと速さに負け、それも出来なくなってしまった。しかも忘れてしまった。笑が唯一覚えてるのは"サプライズ"



……サプライズ…?
あー…えっと、何が?
それよりこの人、絶対息継ぎしてないよ。…よし、この人のあだ名は宇宙人みたいに喋るから"宇宙人"に決定!