よく分からないまま、
吉野がはりきっていたドライブは、
次の日にアンの仕事がなくて、
その日に伸治のバイトがない夜に実行された。


スタートは夜の8時。

行き先は未定だった。


「で、どこに向かいますか?」

呆れた調子で伸治は聞いた。

「何?なんなの?」

アンは不安そうだ。

「アンちゃんが今一番行きたいところは?」

そして吉野が言った。

「え?」

「どっかあるだろ?気持ちが休まる場所が。」

(なるほど、そーゆーことかぁ。)

伸治もようやく分かったようだった。


「どこでもいーの?」

「いーよ、日本なら。」

伸治は腹をくくって答えた。

すると、

「マジ?じゃあ俺、沖縄!」

「オメーじゃねーよ!」

「すみません。」

吉野も盛り上げようと頑張っているのが分かった。


「じゃあ、久しぶりに、小田原に…」

「…了解。」


行き先は決まった。


それほど遠くなかったことに、
少しだけ安心して、クルマを走らせた。


「せっかく帰るのに夜で良いの?」

「…星…見えるかな?」