ある日のこと…

店に男女が入ってきた。

どうやら、今日は二人にとって、初めてのお泊りのようで、
やって来て早々に、
歯ブラシや下着を手に取り、
それから、
そのまま店内を物色しはじめた。


(はいはい、お幸せに!)

伸治の機嫌は悪かった。


高校時代、あれだけ頑張っていたサッカーは、
これといって、関係者の目にとまることなく、
今や、サークルで楽しんでいる程度。

でも、サッカーを愛する気持ちは今も変わらない。

そして明日、(正確に言えば、すでに今日)
試合を控えていて、
コンディションを調えるため、残業はしないはずだった。

が、あと8分で1時という時、
若旦那からの、少し遅くなると連絡が入ったきり、
まだ姿を現さないことにイラついていたのだ。


「あ〜!アンちゃん!一人で表紙になってる〜!」


さっきのカップルの女の声にさえもイラっとする。


「なんか、モデルの顔の区別がつかないんだよなぁ、俺。」

「そんなの、グラビアアイドルの方が、皆、同じに見えるんですけど。」


聞こえてくる会話に、

(区別なんかつかなくていいんだよ、そんなもん!)

勝手に参加していた。


「でもホラ、可愛いくない?アンちゃん。」

「ん。まぁな。」

「この子、あたしの友達の妹の、中学の時のクラスメートなんだって!」

「遠いーなーソレ!」