「俺じゃないっすよぉ!」


バイトを問いつめたが、
若旦那にチクったのは、どうやら他にいるようだ。


「別にいいじゃないっすかぁ。人生、生きてりゃ色々ありますって!給料にひびくワケじゃなかったんすよねぇ?」

「まぁ…」

「じゃあイイじゃないっすか。全然オッケーっすよ!」


全然オッケーなんかじゃない。


ここに来る前、夕飯のおかずを持って、若奥さんが部屋にやってきた。


なにやらニヤニヤとして、昨日のことを詳しく知りたがっている。

もちろん、謝るばかりで、説明なんかしなかったが、
ひょんなことに、オーナーの本音を聞くこととなった。


「ここ、若い女の子も住んでるでしょ?伸治くんに、あまりにも女の気配が感じられないから、女性住民とのトラブルとかで、伸治くんの名前が浮上してきやしないかって心配してたみたいで、安心してたわよぉ」

(はじめから疑ってかかってんじゃねーか!どーゆー心配だよ!ほっといてくれ!)


まだ、住む場所を変えるわけにもいかないし、
しばらくすれば、落ち着くであろうことを願って、
その日も、やるべきことをこなすしかない伸治。



「いらっしゃいませ。」


そこへ、オーナーの親戚の娘がやって来て一言。

「昨日は大変だったね〜。」

「ん…」


伸治はピンときた。