「な、なんだよ。」

「だって来るとき、下で会ったもん、あたし!その人と!」


そんなウソなど、朝飯前の由衣は、
吉野から、伸治が戻っていると連絡を受けてから来ているのだから、
強気なのは当然だ。


そして、
その時に見せた伸治の表情も、
見逃しはしなかった。


「なんで?なんでウソつくの?ねー!!」


これが、さっき吉野が
ほほ笑みの裏で企んでいたことだったのだ。


「ごめん!コレには色々あって!」

「色々って?!」


由衣にとって、アンの存在を
伸治の口から聞き出す、絶好のチャンスとなった。


「落ち着いて聞いてくれよ!」

「なんなの?!」

「…オーナーのところに行ってたんだ。」

「…何しに?」

「シフトのことで、相談に。そしたら、もうこれからは、無茶なシフトは」

「ウソ。」

「嘘じゃないって!」

「じゃあさっき、何で吉野くんが出てきたの?」


それもそうだ。
慣れない伸治の嘘には、無理がありすぎだ。


そしてついに、由衣から切り出すこととなった。


「あたし、知ってるよ!アンが住んでることくらい!」

「はぁ?」

「エレベーターですれ違ったもん。」