なんだかんだ言っても、
頼りにされていることを実感し、
かなりご機嫌だった吉野の顔は、
エレベーターを降りた瞬間、
硬直した。


そこには、
絶対に視界に入るアンの部屋があり、
そのドアは、
つっかえ棒で開いている。


前にも見て、覚えがある光景だ。


それは、
アンの部屋に、伸治が訪ねていた時と同じだった。

が、

何も見なかった様にして、
黙って部屋へと入って行く吉野。


特に、由衣に対して同情心は芽生えては来なかった。


それどころか、

その顔は、鼻歌でも唄いだしそうな表情で…


由衣の電話が伸治に繋がらなかった訳が、
アンの部屋に居たからだと判明した瞬間であったのだ。


(わざとケータイ持たなかったのか?)


それにはこんな理由があった。


由衣に電話したあと、
伸治が返信を待っていたのは確かだ。


やっと着信音が鳴り、慌てて出たその電話は、
ひと段落つけた、
アンからのものだった。


しかし、その内容はアキラとのことでは無く、
伸治が造ったプラネタリウムが、壊れて点かないんだと言うもの。


最初は電話で、
どんな状態なのかを聞き、
色々と指示を出していたのだが…