デパートのベビー用品売り場で鈴の入った水色のクマと小さな白い靴下を買った。
店員の訝しげな顔さえちっとも気にならない。
街を歩きながら、バスに乗りながら、暖かいミルクティーを飲みながら、
そっとまだ平らなその腹部に手のひらを当てる。
静かに静かにうちよせてくる波のように、幸福感が胸に広がっていく。

 美香は嬉しかった。嬉しくて嬉しくて、
その時も敦司の仕事場の近くで、彼を待ったのだろうと思う。
驚いている彼に、幸せな気持ちをはしゃぎながら告げたような気がする。
 そんな自分も、受け止める彼も、
今ではまるで映画の登場人物のように、朧気な、記憶の中の映像の一部でしかない。―