「もう夏も終わりらねぇ」
 保育園の帰り道、金木犀の香りの立ち込める通りで、
誰の口真似か突然息子が生意気な言葉を呟く。
少々季節のずれたその愛らしい発言に、
美香は思わず抱き上げて頬ずりする。
 
「祐ちゃんそれ先生の、マネっこなの?」
「マネっこてなぁに?」
祐太はくすぐったそうに身をよじる。
地面に下ろすと、大好きな消防車と赤いパトカーを見つけて駆け出した。
「車に気をつけて。飛び出しちゃダメよ」