喫茶店で向き合って熱いミルクティーを飲みながら、
翔太とこんな店に来るのはそういえば初めてだな・・などとぼんやりと思う。
初めてだと気づいたことがその日に最後になるなんて、皮肉で寂しい。
 足元には小さなベージュのスーツケースが置いてある。
結局あの部屋からどうしても持って行きたいものは、
このスーツケース一つ分にしかならなかった。

 敦司とは、顔を見たら決心が揺らいでしまいそうで、
短い置手紙を残しただけで部屋を後にした。
『今までありがとう』それ以外何も言うことはなかったし、
子どものことは言えなかった。