一週間後にもう一度手術を行い、あわせて十五日間入院した後、
美香は退院を許可された。たったの半月の入院だったのに、
外の空気はすっかり変わっていた。
金木犀の香りがどこからともなく漂ってくる。
美香は大きく息を吸い込んだ。
だが、大好きなその香りをいくら吸い込んでみたところで、
心と体にぽっかりと開いた空洞は、
まるで埋まる気配を見せなかった。
 病院での手続きの間も、タクシーの中でも、敦司は優しかった。
かける言葉は少なくても、食べたいものはないか、行きたいところはないかと、
しきりと気を使う。
 
 そして、十五日間掃除をしていない部屋の湿ったシーツの上で、
待ちきれないように敦司は美香を抱いた。
 医者には、少なくとも二ヵ月はひかえるようにと言われていた。―