―仰向けに寝かされた状態で、いくつかの質問を受ける。
子宮口を開く機械を取り付けた痛みは、今朝はもう治まっていた。
麻酔を効きやすくするという説明の注射を肩にされた後、手術室に運ばれる。
 静かな窓のない部屋。この場所で、いくつの絆が引き裂かれてきたのだろう。
堕胎について多くを語る人を美香は知らない。
絶望、憎悪、安堵、絡み合ったあらゆる感情は、
癒されることなく行き場を無くし、今なお漂い蠢いている。
 
 左腕に刺された注射が、テープで固定されている。
針の位置が悪くて(痛いからやり直してほしいな・・)
そんなことをぼんやりと考えていた。
薬が流れ込むにつれて、痛みが増してきたその途端、
ふっと眼の前がぼやけて美香は深い眠りに落ちた。