カウンターの隅で女の子たちのお喋りを聞きながら、
客がくるまでの時間を過ごす。
 隣で黄色いマニキュアを塗りながら、しきりと愚痴をこぼしている喜美恵は、
まだ十九歳になったばかりの歌手の卵だ。
 
 カウンター席が六つ、形を変えられる状態でテーブル席が六つあるだけの、
こじんまりとボルドー色でまとめられたこの店は、
簡単なワインを数種類置いている。
 いわゆるキャバクラとは違って指名のシステムを使ってまでの、
女の子を前面に出しての営業はしていない。
初めの料金で飲めるメニューの中にも、
水割りなどだけでなくハウスワインの赤・白が用意されているところが特徴だ。