オフィス街の雑居ビルの一階にうちの旅行代理店はある。会社に行くと同僚の志保に呼び止められた。先輩だが同い年なのでよく話してる。
「美香、昨日ワンピなんか着てきてデートだったんでしょ」
志保はにやにやして、事務服に着替える私に耳うちした。
「違うわよ。友達よ。」
私はそっけなく答えた。
「また例の年上の男友達?」
「そうよ」
「男女の友情ねえ…。よくやるよねえ」
志保は呆れたような半笑いを浮かべた。
デスクについてパソコンを立ち上げると、志保に呼ばれた。
「美香、電話!外線1番!」
受話器をあげると知らない女の声がした。
「本田と言います。山川美香さんでしょうか」
「はい。」
「あの」女は躊躇いがちに言った。「高谷さんのことでお話があります」
ドキッとしたが妻でないことは確かだ。
「高谷さんとはお友達ですが、それが何か?」
「私、彼と付き合ってるんです。一度お時間頂けませんか?」