薔薇の欠片



だけど、突然に僕のジャケットが引っ張られた。


内心、驚いたが

それもいい、と思った。



「あの……お名前は……」



引っかかった。



「玲、と申します」


「玲さん……」


「はい」



そうして、僕は香水店を出た。



心の中は、充分な満足感で溢れていた。


彼女はもう、僕に堕ちている。



こんなに楽な獲物は今までいなかった。