「どうしたの、なんて。本当は気づいてるくせに」
僕はそう冷たく言い放つと女の唇にキスを落とす。
女はくすぐったそうにふふっと笑って、僕の背中に手をまわす。
僕は横目で邪魔ったらしい腕だなと思いながらも首元に唇を滑らす。
やだ、と言いながらも嬉しそうな素振りを見せる女。
……うざったらしい。
この女のキツイ香水くさいにおいが嫌いだ。
まず、自意識過剰なところも気に入らない。
人間自体が気に入らない。
僕は女が気づかぬように牙を剥き出し、首元を噛み付いた。
そのとたん、女は悲鳴にも近い声で「痛い!」と言った。
そして、気づいた。
自分の体から流れ出す血に。
僕が吸血鬼だということに。
「嫌だ、離しなさいよっ!
吸血鬼なんかに殺されたくないわっ!
それならまだ違う男にしとけば……」
僕は止めを刺した。
そうして一気に女の体から力がぬけていく。