* * *




母と父は寝室からリビングに出ると、テーブルの上の手紙に気づいた。


母は丁寧にそれを開け、一枚の紙に目を通した。




“お母様、お父様へ



ごめんなさい。

やっぱり私は忘れることができません。


親不孝な娘で本当にごめんなさい。

だけど、やっぱりこれだけは譲れません。


本当は、ちゃんと口で言いたかった。

それでも、二人の前で言ってしまうと決心が揺るぎそうで、こういう形になってしまいました。


私をここまで育ててくれて本当にありがとう。


ありがとう。


どうか、お体には気をつけてください。




憂より”



母は口を手で抑え、涙を零した。


手紙を受け取った父は、母の方を抱きながら言った。



「強くなったな……」



母は頷き声を震わせて言った。



「本当。いつの間に……こんなに立派になったのかしら……っ」