……ありがとう、百合。
やっと、取り戻したよ。
この香水が無かったから、足りなかったんだ。
私と玲さんが始めてあったときの証なの。
貴方からの始めてのプレゼントで、一生の宝物だって決めた物。
ごめんね、忘れてて。
「憂、よく聴いて。貴方が戻ってきたときのこと、教えてあげる」
私は百合にしがみついたまま頷いた。
いつの間にか、百合が私にじゃなくて、私が百合に抱きついていたんだ。
「憂が帰ってきたのは、夜中だった。
……と言ってもね、憂は寝ていたの。
“気を失っている”みたいな様子だったわ。
憂を見たとき、私はてっきり嫌な方向に考えたの。相手が相手だったから。
憂は……1週間目を覚まさなかったわ。
点滴もしてもらっていたけど、朝だけは憂のお母様が外していたわ。
“憂が目を覚ましたら、いつもどおりを装うこと”
そう言われていたわ。
言われてはいたけど、
憂が目を覚ましたらすぐにでもまたあの方のところへ戻って行っちゃうんじゃないかって思った。
だけど、目を覚ました憂はそんな様子は全然無かった。
安心したはずなのに、違和感を感じたの。
憂が、憂じゃなかった。
すっかりあの方のことを忘れていた。
……それは、憂が一番わかっているわよね」
私は頷く。